チタンとは?
チタンは軽くて強く、錆びない、身体に優しいなど多くの優れた特性がある金属で、様々な用途に広がっています。
チタンの歴史、チタンの製造プロセス、チタンの種類と材質などの観点から下記目次に沿って解説していきます。
注)当社が取り扱っている板や棒/線状に成形されたチタンは、専門的には「チタン展伸材」「チタン材」という表記をされることが多いですが、本HP内では「チタン」として表示します。
1. チタンの主な特徴
チタンには下記のように優れた特徴があります。
| (1)軽い | 比重(密度)は4.51で鉄(7.9)や銅(8.9)の約60% |
| (2)強い | 鉄と同等の強度を持ち、比重とのバランスで見る「比強度」が非常に高い |
| (3)錆びない | 地球の自然環境下では錆びることがない ※チタンはなぜ錆びにくいのか?【Q&Aへ】 |
| (4)身体に優しい | イオン溶出が少なく金属アレルギーが起きにくいため生体適合性に優れる ※金属アレルギー【Q&Aへ】 |
| (5)意匠性が高い | 表面の工夫により高級感ある仕上げができたり、 塗料を使わず様々な色を付けることができる(陽極酸化発色) ※チタンの発色加工【Q&Aへ】 |
| (6)加工できる | 加工性が悪いと言われることもあるが、適切な条件の下では様々な加工ができる (切断・圧延・成形・鍛造・溶接など) |
| (7)熱膨張性が低い | 熱膨張が小さくガラスやコンクリートと同等 |
| (8)磁性がない | 磁石には付かない |
2. チタンの発見と歴史
説明項目
2-1. 2人のチタン発見者と名前の由来
2-2. 金属チタンの精錬技術開発
2-3. チタンの最初の用途開拓
2-4. 日本でのチタン生産
2-5. 新しい精錬法開発に向けた動き
2-1. 2人のチタン発見者と名前の由来
1791年にイギリスの聖職者であるグレガー(William Gregor)が海岸の砂浜から採取した、磁性を帯びた砂鉄の中に、鉄以外の金属の酸化物が存在することを発見しました。
「チタン」の命名者はドイツ人クロプロート
1795年にドイツ人化学者のクロプロート(M.H.Klaproth)が、ハンガリーで採られた鉱石がこれまで知られていない新しい金属であることを発見し、ギリシャ神話の巨人(Titan:タイタン)にちなんでTitanium(チタニウム、チタン)と名付けました。
後日、この鉱石はグレガーが発見したものと同じであることが確認されます。

2-2. 金属チタンの精錬技術開発
チタン鉱石から高純度のチタン精錬は難しい
この時に発見されたのは「ルチル鉱石」という比較的チタン含有量の多いチタン酸化物鉱石で、その後多くの化学者により純度を高める試みが行われましたが成功に到りませんでした。
その理由はチタン酸化物から酸素などの不純物を取り除くのが極めて難しいためで、99%以上の高純度のチタンを製造できるようになったのは20世紀に入ってからです。
ハンター法とクロール法
1910年のアメリカ人のハンター(M.A.Hunter)が最初ですが、この方法はまだ小規模なものに留まり、トン単位での生産に成功したのはアメリカ人のクロールが最初で1936年のことです。それぞれ開発者の名前を取り、ハンター法、クロール法と呼ばれ、クロール法は現在でも主流の生産法です。
チタン精錬法は工程が長い
ハンター法、クロール法とも精錬方法は2段階に分かれており、最初にチタン酸化物(TiO2)を塩化物によりチタンと結合させて、チタン塩化物(TiCl4)と二酸化炭素(CO2)にします。次にチタン塩化物から塩素を取り出すために他物質と結合させてチタンを分離します。(還元・分離工程と呼びます)
ハンター法は他物質にNa(ナトリウム)を用い、クロール法ではMg(マグネシウム)を用います。
2-3. チタンの最初の用途開拓
最初の用途は航空機
チタンの「軽くて強く錆びない」性質は航空機に適しているとして、1936年からの10年ほどは純チタン(99.4%以上)が板や棒の形状に生産され使用されていましたが、大きく成長する機会になったのが1953年の6%アルミと4%バナジウムが入ったチタン合金の開発です(通称6-4合金)。
高強度の6-4合金は軍事に最適
この合金は純チタンよりも加工はやりにくいですが、強度が大きく向上する(引張強度は汎用純チタンの約3倍)ため、1960年代以降、航空機や軍需用途(戦闘機、潜水艦、戦車など)で需要が増えていきます。

2-4. 日本でのチタン生産

日本でのクロール法による工業生産開始は1952年で、1954年から量産が始まります。
日本の場合は軍需向け生産がないため、6-4合金よりも純チタンの生産が主となり、高い耐食性を活用して化学プラントや石油精製設備、発電所における反応容器や熱交換器用途に広がります。
用途の拡大
日本でのチタン材生産は1970年代後半以降、用途の拡大に伴い増減を繰り返しつつも成長していきます。
具体的には、
- 建材 (屋根・壁など)
- スポーツ用品 (ゴルフクラブ、釣り具など)
- アウトドア用品 (コッヘル、カップなど)
- 民生品 (メガネや腕時計、調理器具など)
- 医療用途 (人工骨/関節・歯根など)
- 自動車/二輪車 (排気管・コネクティングロッドなど)
- IT製品外装 (スマホ、ノートPC、デジタルカメラなど)
- 電極 (不溶性電極)
など実に多くの分野に採用が広がっていきました。
最近では、燃料電池向けや液晶/有機EL製造装置向けといった最先端分野でも使用されています。
下のグラフは日本チタン協会が発表している国内メーカーの出荷実績推移です。2008年くらいまでは順調に成長してきましたが、それ以降は規模的には伸び悩んでいるのが現状です。チタンの優れた特長を活かした更なる用途開拓が業界を挙げて進められています。




2-5. 新しい精錬法開発に向けた動き
日本国内生産は減少傾向
日本でのチタン材生産は2010年前後の年間2万㌧をピークに最近は伸び悩み、2024年は1万㌧近くまで減少しました。2025年も今のところ前年度と同水準で推移しています。(日本チタン協会統計より)
その理由は幾つかありますが、 ①他金属と比べて価格が高いこと、②他金属と比べて加工に一定の工夫やノウハウが必要なこと、が挙げられます。
他金属と比較してチタンは製造コストが高い
チタンが使われる理由で最大のものは「高い耐食性」ですが、常に鉄(特にステンレス)、銅、アルミなどの汎用金属との「費用対効果」が比べられ、チタンは優れた効果はあるが初期費用が高いことが理由で採用が見送られることが多いのが実情です。
また、チタンは絞り加工性に優れる性質がある反面、焼き付きが起こりやすいため、加工性が良くない印象を持たれることがありますが、適切な潤滑性を維持すれば加工できるといった鉄やアルミとは少し異なる工夫が必要なことを留意したいです。
新精錬法開発の進展
価格が高い局面を打開する方策として、国内の各大学や研究機関で新精錬法の研究開発が続けられていて、これが実現すればチタン製造コストが大幅に下がり、チタンの優れた特性を活かしやすくなるため、チタン市場が再び大きく成長していく可能性があり、期待されています。