チタン(金属チタン)の種類と材質
ここでの説明項目
(1) 規格別の材質と成分値、特徴
|純チタン・耐食チタン合金の規格・材質・成分
|高強度チタン合金の規格・材質・成分
(2) JIS規格の説明
(3) JIS規格とASTM規格
(4) チタンの物性と特徴
(5) 当社対応の規格とサイズ
(6) 表面仕上げ(板材)
(7) リロールサービス(純チタン板材)
(8) 品質欠陥の種類
規格別の材質と成分値、特徴
純チタン・耐食チタン合金の規格・材質・成分
純チタン(及び耐食チタン合金)は99%以上の組成がチタンです
純チタンはJIS規格では強度別に4種類(1~4種)が設定されており、数字が小さいほど強度が低めで加工性が良い材質です。
一般的に2種材が汎用材として最も多く流通しています。
耐食チタン合金は純チタンに微量のPd(パラジウム)を添加して耐食性を更に高めた合金で、強度面は純チタンとほぼ同じです。環境の厳しい化学プラント等で使用されます。

高強度チタン合金の規格・材質・成分
高強度チタン合金は種類がたくさんありますが、流通している種類は限られています。区分として「α+β合金」「β合金」に大別されます。(「α合金」も存在しますが現在はほとんど生産されていません)
高強度だが加工が難しい「α+β合金」
「α+β合金」は純チタン2種材の2-3倍ほどの強度がありますが、加工性があまり良くなく、熱間加工や切削による加工が一般的で冷間での加工は非常に難しいです。
代表格が6Al-4V合金(通称:6-4合金)で航空機や軍事、医療、ゴルフクラブ等で幅広く使われています。
医療用は「6Al-4V ELI」という6-4合金の中でも不純物が少ない組成で、一般の6-4合金とは区分されています。
尚、6-4合金はJIS規格(60種)だけでなく、ASTM規格(Gr.5)でも一定量の流通があります。
6Al-4V合金の加工性の悪さを改善したものが3Al-2.5V(通称:ハーフアロイ、6-4合金の合金成分が半分の組成)で、限定的ですが冷間加工も可能です。現在この合金は主にメガネのリム(レンズをはめる部分)の標準素材として使用されています。
β合金はα+β合金より強度はやや低いが加工が比較的やりやすい
「β合金」は高強度ながら冷間加工性があることがα+β合金との大きな違いです(とはいえ純チタンに比べれば加工しにくいです)。
代表格はTi-15V-3Cr-3Sn-3Al合金(通称:Ti-15333、または15333)で、かつてはゴルフクラブで多く使われていましたが、現在はメガネ・自転車ギア(スプロケット)・釣り具などに使用されています。 他に、15333よりも高強度なTi-3Al-8V-6Cr-4Mo-4Zr合金(通称:Ti-38644、またはβ-C)や、15333よりもやや軟質なTi-22V-4Al(DAT51)などがあります。

JIS規格の説明
日本国内で流通している製品の大半はJIS規格品(又はJIS準拠品)で、一部ASTM規格品もあります。
JIS規格では形状と用途により9種類(スポンジチタンを加えれば10種類)が設定されており、板またはコイルの場合は「H4600」、丸棒「H4650」、線材「H4670」という具合です。【下表参照】
また、純チタンでは形状と1~4種により規格記号が違いますので注意してください。【下表の「純チタン」の規格記号 参照】
例えば、純チタン板材で1種材の場合は「JIS H4600 TP270」、純チタン丸棒で2種材の場合は「JIS H4650 TB340」と表示します。

JIS規格とASTM規格(及びその他の規格)
日本で使用されている製品規格は例外を除きJISとASTMが大半です。ただ、JISとASTMは似ているとは言え微妙に規定内容が違いますので、ここでその一部をご紹介します。

純チタン1種と6-4合金は、JIS/ASTM間の材質の差はほとんどないと理解して良いでしょう。(但し、試験方法など異なる点はあります)
注意が必要なのはJIS 2種とASTM Gr.2で、下グラフのようにJISのほうが0.2%耐力の範囲が低め(黄色部分)のため、少し軟質になることから、ASTMに比較して加工性は良くなります。ASTM Gr.2はJIS 2種より少し硬いため(網掛け部分)、従来JIS 2種材を使っている場合には注意が必要です。
また、下の右グラフの2つの円はJIS 2種とASTM Gr.2それぞれの一般的な材質範囲を示しており、ここからも平均的にはJIS 2種材のほうが少し軟質であることが分かります。

また、JIS/ASTM以外の規格も下表に整理していますのでご覧ください。

チタンの物性と特徴
チタンには他金属とは異なる優れた特徴があります。例えば、比重は鉄の60%程度で引張強さは一般鋼材とほぼ同等ですので、鉄(またはステンレス)からチタンに変えると半分近い重量に軽量化することができます。
また、耐食性に極めて優れ地球上の自然環境下では全く腐食しませんので、メンテナンスフリーで交換することなく使用することができます。
通常のチタン材は電気抵抗が高く、電気を通しにくいです。
(電気抵抗を低くする方法はあります)
熱伝導率が低くて放熱性が低いため、熱はこもりやすいです。

当社対応の規格とサイズ
(1) 板材
純チタン(JIS 2種)板厚 1.0~6.0mm 製品紹介 板材(純チタン)へ ★下記の表面仕上げ(板材)も参照
β合金(Ti-15333) 板厚 0.6/0.8/1.0mm 製品紹介 板材(βチタン)へ
(2) 線材
取り扱い形状 丸線・直線・異形線
取り扱い品種 純チタン(TW340)、β合金(Ti-15333・Ti-22V-4Al)、ハーフアロイ(3Al-2.5V)
製品紹介(線材)へ
丸線・直線材サイズ表 へ
製品紹介(異形材)へ
※ご要望のサイズへ切断対応いたします。
※上記以外の規格・サイズをお求めの場合はお問い合わせください。入手できる可能性があります。
表面仕上げ(板材)
チタン板材は製造工程の違いにより、表面性状が少し異なります。
表のように国内メーカーでは5種類の表面仕上げがありますが、当社ではうち3種類を取り扱っています。

リロールサービス(純チタン板材)
当社ではお客様のご要望に応じて、ご指定の板厚にリロールするサービスを行っています。
表面仕上げの表にある通り、BA(SD3)以外は光沢のない粗い表面ですが、リロールをすることで光沢度が上がります。(光沢度合いはリロール代により異なります)
品質欠陥の種類
チタンは鉄やアルミなど他金属と同様に量産されている工業製品ですので、100%完全無欠という訳ではなく、一定の品質欠陥が製品に存在する可能性はあります。
但し、用途にもよりますが、品質欠陥の多くは使用上の問題はない場合がほとんどです。
特にチタンはシミや汚れによる変色が出やすいという性質があるのですが、あくまで見た目だけで本来なら欠陥に分類されるものではないでしょう。それらも含めて、チタンの主な品質欠陥を右表でご紹介します。
