Q&A
(1) チタンはなぜ錆びにくいのか?
(2) チタンはなぜ価格が高いのか?
(3) チタンに金属アレルギーはあるか?
(4) カラーチタンとは?
(5) チタンの発色加工ってなに?
(6) チタンは地球上にどのくらい存在するのか?
(7) チタンとステンレスの違いは?
(8) チタンは磁石にくっつく?
(9) チタンは加工しにくいって本当?
(10) 純チタンとチタン合金の違いは?
(11) チタンを溶かすには?
(12) チタンは熱を通しやすい?
(13) チタンは電気を通すか?
(1) チタンはなぜ錆びにくいのか?
チタンは地球上の自然環境下では全く腐食しないことは既述の通りですが、ではなぜ全く錆びないのでしょうか?
その理由は空気中の酸素とチタンの強い結びつきにあります。
チタンは空気に触れると表面に薄い酸化膜を作る
チタン(Ti)は空気に触れると瞬時に酸素(O)と結合して、表面にとても薄い酸化被膜(TiO₂)を形成します。
この薄さはおおよそ0.01~0.05μm(mmで表示すると0.00001~0.00005mm)くらいしかないのですが、これが非常に安定した性質を持っていて、水分や塩分といった他の金属では錆びてしまう環境でもビクともしません。これがチタンが錆びにくい理由です。
逆に言えば、この酸素との強い結びつきのお陰で、チタンから酸素を引き剝がすのに複数の工程と大きなエネルギーが必要となり、精錬コストが高い理由となっています。

(2) チタンはなぜ価格が高いのか?
「チタンはなぜ錆びにくいのか」で説明したように、チタンと結びついた酸素を分離するために複数の工程が必要で、多くの電力を使います。
これが、チタンが他の汎用金属に比べて価格が高い理由の一つです。
また、『チタン精錬プロセス』ページで説明しているように、精錬工程が連続プロセスではなくバッチ処理であること、製造日数を要することもコストが高い理由です。
一方で、チタンには軽くて強い・耐食性・身体に優しいなど優れた性質もありますので、今後精錬コストが下がっていけば、爆発的に需要が増える可能性を秘めています。
(3) チタンに金属アレルギーはあるか?
「チタンは金属アレルギーが出にくい」が答えです。
チタンは人工骨、人工歯根、メガネ、時計、アクセサリーといった身体の中や皮膚に直接接触する部分に幅広く使用されています。
ただ、一部の人にはアレルギーが出る場合がある、との歯科医師からの指摘もあります。歯科用に使われるチタンは6-4合金が一般的ですので、4%含有されているV(バナジウム)が関係している可能性もありますが現段階では未確認です。
ステンレスに通常含まれるNi(ニッケル)やCr(クロム)は金属アレルギーが出やすいとされていますが、チタンはそれらに比べればアレルギーは出にくいと考えられています。
(4) カラーチタンとは?
チタンは色鮮やかな着色ができることから、カラーチタンと呼ばれることがありますが、「チタンの陽極酸化発色」や「発色チタン」などが正しい呼称です。
これはチタン表面に塗料などを使って色を付けているのではなく、チタン自体に「色が付いているように見える」手法です。次項でもう少し詳しく説明します。
(5) チタンの発色加工ってなに?
陽極酸化発色法
陽極酸化とは、電解液中にチタンを浸し、チタンを陽極(正極)として通電することで、金属表面に酸化皮膜を生成させるという化学的な表面処理です。
チタン以外にもアルミやステンレスなどの金属でも使われている手法ですが、顔料を使うことなく様々な色合いの着色ができるのはチタンだけです。
酸化被膜の厚みで色が変わる
チタンの表面酸化被膜はごく薄く0.01~0.05μmですが、この状態では無色透明です。
しかし、この被膜を徐々に厚くしていき0.05μm以上になると、膜厚が厚くなるに従い、黄→金→茶→紫→青→緑という具合に変色していきます。
これは一種のプリズム効果で、光が当たる際に膜厚により光が屈折して色が付いているように見えるのです。
尚、チタン発色でできない色は、白色・黒色・赤色です。 (但し、黒に近い濃い灰色は陽極酸化ではない手法により可能です)
(6) チタンは地球上にどのくらい存在するのか?
チタンは地球上にたくさん存在しています。金属の中では、多い順でアルミニウム、鉄、マグネシウムに次いで4番目に多く、枯渇する心配は当面ありません。
『チタンの原料(鉱石)について』参照
(7) チタンとステンレスの違いは?
ステンレスは鉄の一種で、鉄にクロム(Cr)やニッケル(Ni)といった他金属を含有させることで耐食性を高めたものですが、チタンは鉄とは全く別の金属で性質も異なります。
ステンレスは錆びにくい性質ですが、全く腐食しない訳ではなく、例えば汎用品種のSUS304の場合は、海浜など塩分濃度が高いといった環境では錆びる場合があります。一方、チタンが自然環境下で錆びることはありません。
(8) チタンは磁石にくっつく?
チタンには磁性がないため磁石には付きません。
(9) チタンは加工しにくいって本当?
チタンは加工しにくい金属と言われることがありますが、チタンの特性を理解した上で加工すれば決して難しいことはありません。
チタンを加工する際の主な留意点は以下の2点です。
① 切断や切削の際には、『焼き付き』対策
② 曲げ加工やプレス加工では、『スプリングバック』対策
チタンの加工について へ(作成中)
(10) 純チタンとチタン合金の違いは?
純チタンは成分の99%以上がチタンで鋼材並みの強度があります。JIS規格/ASTM規格とも強度と加工性に応じて4種類の設定があります。
チタン合金はチタンに複数の金属元素(バナジウム、アルミ、鉄など)を添加して主に強度を飛躍的に高めたものです。
組成により「α+β合金」「β合金」の2種類があり、α+β合金ではTi-6Al-4V(6-4合金)が代表的な汎用合金、β合金ではTi-15V-3Cr-3Sn-3Al(Ti-15333)が代表的な汎用合金です。
また、高強度合金とは別に「耐食合金」と呼ばれるものもありますが、強度や加工性が純チタンと同等であることから、純チタンの範疇に入れられることが一般的です。
(11) チタンを溶かすには?
チタンは極めて耐食性に優れた金属ですが、塩酸・硫酸・弗酸など溶かすことができる薬剤はあります。
チタンの酸洗はチタン表面の酸化物や異物を除去するための工程ですが、国内では弗酸(の混合溶液)が一般的に使われています。
(12) チタンは熱を通しやすい?
チタンは熱伝導性が低いため熱は通しにくい性質です。
つまり熱が「こもりやすく」「冷めにくい」ことから、カップやフライパンに採用されていますが、「冷たいものは冷たさが持続しやすく」「熱いものは熱さが持続しやすい」のです。フライパンの場合は、弱火でも充分な熱量を保持できるため、光熱費の節約というメリットがあります。
(13) チタンは電気を通すか?
チタンは一般的には「電気を通しにくい」「導電性が低い」です。
これはチタン表層に形成されている酸化被膜(TiO2、厚さ0.01~0.05μm)が電気を通しにくいためで、逆にチタン自体は導電性があります。
適切な表面処理を施せば、電気を通すようにすることは可能です。